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人形町・よし梅【にんぎょうちょう よしうめ】




人形町交差点を、水天宮方面へ歩くこと約2分。江戸三十三観音第三礼所、大観音寺の脇へ入ると、なんとも風情のある小路がビルの合間に現れる。

芸者新道。昔は、昼間から小鼓や三味線の稽古の音が聞こえていたという艶やかな小路で、粋な江戸っ子たちは親しみをもって「じんみち」と呼んだ。「このあたりは昭和20〜30年代がとても賑わってたね。芸者も大勢いたんですよ」。そう話すのは、芸者新道で代々、魚河岸料理屋を営んできた「よし梅」の2代目主人、高野享士さん。この店は、芳町に住む先代うめが昭和2年に創業して以来80余年、下町情緒と江戸料理を伝え続ける老舗の名店だ。花柳界が華やかだった頃は、待合いに料理を出すこともあったというよし梅。始めは小さな店だったが、隣にあった置屋と印刷屋を買い取り、今の広さになった。店内には小さな段差があったり、柱が多かったりと入り組んだ造りがユニークで大広間がないのも特徴。元・芸者置屋だったことを思わせる、数寄屋造り建築のいたる所で、昭和初期の面影がしのばれる。なんとも風情のある建物だ。

ここの名物が「ねぎま鍋」。葱とマグロの「ねぎま」。池波正太郎の作品にも登場するねぎま鍋は、アンコウ鍋と人気を二分する江戸二大鍋として親しまれてきた料理だったとか。煮立った出汁に椎茸や葱、白菜を入れ、脂の乗ったトロをさっとくぐらせて、鰹節の香りがふんわり漂う出汁と一緒にいただく。トロは、中が少し赤いくらいが食べ頃。〆めには、ニラとタマゴの雑炊を。「鍋の具材もこだわっていますが、とりわけお客様から好評いただいているのが出汁。鰹節と薄口醤油、塩と酒で作られたシンプルなものですが、上質な素材をふんだんに使い、微妙な調合で生まれる味が、親しみのある、そして真似のできない味わいなんだと思います」と三女の多身予さんが柔和な笑みをたたえながら話す。

本店以外にも賑わいをみせる別館や芳町亭、浜町店、総菜や珍味をそろえる売店も、現在は三代目となる三姉妹を中心に受け継がれている。「明治維新後の一時期、すき焼き風のねぎま鍋が、新しモノ好きな高官の間で流行ったので、よし梅でも両方出していた時期もありましたが、今では、この江戸風だけを出しています」と高野さん。江戸庶民の御馳走だった「ねぎま鍋」。昔と変わらぬ空間で、今も温かくもてなし続けている。


 おすすめ
特製ねぎま鍋(2人前〜)
4500
鍋コース
700010000
各種一品料理
700円〜

所在地 東京都中央区日本橋人形町1-18-3
営業時間 11時15分〜14時、
17時〜22時
休業日 土・日・祝
(12月〜2月は土・祝の夜も営業)
席数 120席
お問い合せ 03-3668-4069