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フーテンの寅さんの舞台となった街、柴又。駅前にある寅さんの銅像を通り、土産物屋や茶処が軒を連ねる帝釈天の参道を歩くと、ほどなくして現れる帝釈天の左裏を進む。江戸川に突き当たると、川のほとりに川魚料理の老舗「川甚」が佇む。ここは、寛政年間創業の川魚料理の老舗。鰻や鯉、夏は鮎の川魚を賞味できる名店である。
夏目漱石の『彼岸過迄』の一節など、多くの文人たちが、作品に「川甚」を登場させている。昔は土手もなく、川べりに建っていたので、明治時代までは舟から店へ直接あがる客も多かったという。「当時の江戸川はもっと美しくきれいな川で、店では江戸川産の鯉や鰻を出していたんですよ」と話すのは柔和な笑みをたたえる女将。現在は、女将の息子が8代目として店を守る。「川魚というのは活きていないと食べられないものなのです。ですから、お客様の注文が入ってから、生簀で川魚をすくい上げて調理しています」。文人たちも愛した鯉料理は、どれも絶品。淡白でサクサクした歯触りの鯉の身と爽やかな酢味噌が絶妙な「鯉洗い」や、甘めの味噌のとろりとした味わいと粉山椒の風味が豊かな「鯉こく」、あっさりと上品な味が自慢の創業以来の"継ぎ足しのタレ"でいただく鰻の蒲焼・・・・・・。川魚独特の泥臭さは一切感じない。「これは、絶えず湧きでる清らかな井戸水を使った生簀のおかげなのですよ」と、女将は話す。板場のシゴトもひと品ひと品から感じる。鯉こくは、鯉の旨みを存分に引き出すため、鯉の身と合わせ味噌を水から煮る。鯉洗いの酢味噌は、夏になると酸味を強める。伝統の味を守りながら、季節によって味を調整するさじ加減も粋なはからい。そんな川甚の美味しいところを少しずつたっぷり楽しめるのが、毎日20個限定という幕の内弁当。山の幸を味わえる煮物やカラリと揚がった天麩羅、旬魚の焼き物に、サラダやフルーツが所狭しと盛り込まれ、さらには、ミニうな丼とお椀がついた贅沢な逸品だ。
悠々と流れる江戸川の流れや矢切の渡しを楽しみながら穏やかに味わうもよし、京都桂離宮の設計を模して建てられた風情ある離れで、春には桜やつつじを愛でながら味わうもよし。文人たちに思いを馳せながら、川魚を心行くまで楽しみたい。
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